大連市の高齢者ケア施設、約 150 社を会員としている大連市養老福利協会は 4 月 26 日、 会員向けに「高齢者ケア施設建築設計基準」に関する勉強会を開催した。同基準は、国家 住宅都市農村建設部が 2018 年 3 月 30 日に制定したもので、同年 10 月 1 日から全国におい て施行されている。

 

＜新政策で「高齢者ケア施設建築設計基準」を参照＞

 

大連市養老福利協会専門家委員会の董興華主任は、勉強会を開催した背景について「大 連市の多くの施設では建築設計が規範化されておらず、国家基準に合わせて改善する必要 性が高い」と指摘した。また、同市で間もなく実施される予定の新政策においても同基準 は重要な参考基準になっているとし、各施設の担当者は同内容を正確に把握する必要があ ると強調した。

 

同市で実施予定の新たな政策の特徴として以下の二点が挙げられる。まず一点目に、2019 年 1 月 17 日に制定された「大連市養老サービス施設等級評定基準（暫定版）」において、 同基準に関する言及がある。養老施設の等級を決める際、①施設環境・設備、②サービス、 ③運営管理の項目に沿って点数をつけ、点数が高いと等級が高くなる。①の施設環境・設 備を評価する際に参考する基準の一つに同基準が入っており、同項目で高い点数を目指す 施設は同基準をしっかりと守る必要がある。

 

さらに二点目として、同市政府が老人ホームに建設・運営補助金を支給する際の選考基 準も、現行の 1 床当たりの面積、ベッド数、入居者数といった指標から、同基準の内容に 適宜切り替えるとした。新政策に関する詳細は今後発表される見込みだ。

 

＜必ず遵守が求められる 6 項目＞

 

勉強会では、大連理工大学建築・芸術学院の周博教授が「高齢者ケア施設建築設計基準」 について解説した。要点は以下のとおりである。

 

（1） 適用対象施設

 

設計ベッド数が 20 床以上または高齢者の入居者数が 20 人以上の施設（新築、改築、規 模拡大の施設を含む）。長期入居施設とデイサービス施設を含む。

 

（2） 概要

 

同基準では、「基本規定」、「立地・レイアウト」、「建築設計」、「特別要求」、「建築設備」 の 5 つの区分について、詳細な条文を定めている（以下表を参照）。

 

 

 

① 救急車両が建物の主要な出入り口に駐車できるよう通路を確保し、かつ、同通路は建 物の緊急時の病院搬送用通路と隣接しなければならない。

 

② 高齢者ケア施設における高齢者の居室と休憩室は地下、半地下に設置してはいけない。

 

③ 2 階以上（2 階を含む）の建物、地下、半地下に高齢者が使用する部屋を設置する際、 エレベーターを設置しなければならない。同エレベーターはバリアフリー対応とし、 かつ最低 1 台は担架の利用を可能とする必要がある。

 

④ 高齢者が使用する階段は、曲がった形またはらせん型を使用してはいけない。

 

⑤ 高齢者ケア施設における高齢者の居室と休憩室は、エレベーターの坑道や騒音振動の ある設備機械室等と隣接してはいけない。

 

⑥ 熱拡散機や熱湯供給機等につき、やけど防止の措置を採らなければならない。

 

その他の条文については、「正常な場合、守るべき」、「条件が許す場合、優先的に守るべ き」、「条件が許す場合、守ってもよい」に分かれており、ケースバイケースとなる。例と して、上述の大連市で実施される予定の新政策では、必ず遵守すべき条文以外についても 7 一部遵守を求めるとしている。

 

(3) その他 周博教授は、「中国各地の状況が異なるため、国家基準で一律に定めることがますます難 しくなってきており、今後は国家基準の制定は減少する傾向にある」と指摘した。また、 大連市のように高齢者関連の政策において同基準を活用する地域もあるため、同基準を参 考にしつつ、各地域の実施策にも注目する必要があるとした。

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